毎朝、首に香水を吹きかけてから出かけるのが習慣だという人の中には、TikTokに投稿された動画などのおかげで、何となく不安な気持ちになっている人もいるかもしれない。首に香水をつけることが「甲状腺の機能に悪影響を及ぼす危険性がある」として、話題になっている。
だが、実際のところはどうなのだろう?医師たちは、香水をつけることは健康上のリスクだと考えているのだろうか。また、安全な使用方法はあるのだろうか――?
香水の何が問題?
健康に悪影響を及ぼす可能性があると指摘されているのは、ホルモンのバランスを崩す恐れがある「内分泌かく乱物質」。香水の中には、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)や代謝に関連する甲状腺ホルモンの働きを妨げる物質が含まれていることから、甲状腺がある首に香水をつけることには、危険が伴うと主張する人たちがいる。
ただ、これまでのところ、そうした見方を裏付ける研究結果は得られていない。アメリカ・マサチューセッツ州にあるボストン・メディカルセンターのエリザベス・ピアース医師(内分泌代謝科)は、首に直接スプレーした香水が皮膚に吸収されることと内分泌かく乱物質の影響に「関連性はないとみられる」と話している。
首につけるのはNG?
香水を首にスプレーすると、その成分の大半はまず、皮膚の毛細血管に吸収される。オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターの医師でもあるキャスリーン・ワイン博士は、「皮膚、脂肪、筋膜、筋肉の間を通り、甲状腺に局所的に吸収されるのはかなり難しいと考えられます」と述べている。
血流に乗った内分泌かく乱物質は、蝶のような形をした甲状腺やその他の臓器に送り届けられた時点で、すでに希釈されている。つまり、首にスプレーすることが必ずしも、手首など別の部分につけた場合よりも危険だということになるわけではないとのこと。
また、香水に含まれるこれらの物質が及ぼす影響について、まだ十分な研究が行われているわけではない。ピアース医師は、毎日つけた場合に体に吸収される香水の量が、甲状腺の状態に変化をもたらし得る量なのかどうかについても、「明らかになっていない」としている。
要注意の成分とは?
ただし、香水に含まれる化学物質の中には、可能な限り避けるべきものもある。NYで開業しているフローレンス・コミティ医師(内分泌科)は、皮膚につけた香りをとどめておくために使用されているフタル酸エステル類など、含まれている内分泌かく乱物質を確認しておくことは、「私たち自身にとっても、環境のためにも、決して悪い考えではない」と話す。
それは、中には血中のフタル酸エステル類の濃度が高い人もおり、そうした人は「活動型」の甲状腺ホルモンのひとつ、T3(トリヨードサイロニン)の濃度も高いため。また、フタル酸エステル以外の内分泌かく乱物質、例えば防腐剤として使用されるパラベンなどを避けるようにするためにも、香水だけではなく石けんやローションなどのラベルも確認することをすすめている。
いっぽう、香水に使用されている成分は「企業秘密」とされることも多い。そのため、ラベルにすべての成分が記載されているとは限らない。コミティ医師によれば、合成ムスクやウッディ系の重みのある香りに使用される化学物質のガラクソリドやトナリドなども、甲状腺の機能に影響を及ぼす可能性がある。
そのほか忘れてはならないのは、内分泌かく乱物質が含まれるのはパーソナルケア製品だけではないということ。ピアース医師は、化学物質は「食品のパッケージや食品そのもの、水道水にも含まれている」と指摘する。実際、これらの物質はあらゆるものに使用されている。
ピアース医師はさらに、妊娠中や授乳中の人は特に、内分泌かく乱物質を含む製品に注意する必要があるとしている。甲状腺ホルモンの分泌量は「妊娠中にはおよそ50%増加する」として、甲状腺がすでに余計にストレスを受けているそうした時期には、これらの化学物質がより大きな影響を及ぼす可能性があると述べている。
最も安全なつけ方は?
医師たちによると、体のほかの部分より首につけることの方が、甲状腺への影響がより心配だというわけではない。だが、それでも首につけることをすすめるわけではないという。それは、顔に近い場所にスプレーした場合、口や鼻から香水を吸い込んでしまう可能性が高まるため。それが肺に届けば、人によっては呼吸器症状が現れる場合もある。
公衆衛生が専門のロチェスター大学医療センターのダニエル・クロフト医師(呼吸器内科)は、「症状を悪化させる危険があるため、ぜんそくの患者さんには香水の使用を避けることをすすめています」と話す。
「実際、呼吸器専門医である私たちは、患者さんのぜん息の発作を誘発しないようにするため、クリニックでは香りの強い香水やコロンの使用を避けています」
コミティ医師が香水のつけ方としてすすめるのは、「息を止め、空中に向かって香水をスプレーし、そのミストが舞っている場所を通り抜ける」こと。香水をスプレーしたその「ゾーン」を通過してから息を吸うようにすることだという。
その他の注意点は?
甲状腺の機能を健全に保つためには、内分泌かく乱物質に注意する以外にもすべきことがある。医師たちは、次の3つのことに気を付ける必要があるとしている。
フルーツや野菜、全粒穀物に含まれるビタミンやミネラルなど、栄養は甲状腺の機能に大きな役割を果たしている。
体にとって重要なミネラルの「ヨウ素」は、甲状腺ホルモンの産生に重要なもの。ワイン医師は「水、塩、ヨウ素を豊富に含む食品など、摂取するものからヨウ素をとることができているか、確認してみてください」と話している。
甲状腺に問題がある場合、倦怠感や抜け毛、生理不順、便秘、理由が見当たらない体重の変化、不安感、動悸など、さまざまな漠然とした(なんとなく体調が悪いと感じるような)症状が現れる。何か問題があると感じたら、血液検査を受けてみる必要があるだろう。
検査では甲状腺刺激ホルモン(TSH)のみを調べる場合も多いが、「T3」と「T4」も確認した方が、状態(機能が低下しているのか、亢進しているのか)をより正確に把握することができるという。
※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。











